アクチュアリー試験合格には何年かかるかシミュレーションしてみた

今回はアクチュアリー試験に合格するまでには何年かかるかをシミュレーションし、最適な受験戦略を考えてみました。

2019/1/11追記:続編となる記事を作成しました。本記事と同様のシミュレーションをjavascriptを用いて実装してみました。
r-std.hatenablog.com

1.アクチュアリー試験について

アクチュアリー試験は一次試験、二次試験の2部構成となっており、一次試験の5科目をすべて合格した後に、二次試験の2科目を受験することができる仕組みになっています。
一般的には正会員になる(二次試験に合格する)には約8年程度かかるものと言われていますが、Rでシミュレーションしてみるとどうなるでしょうか。

2.試算結果

(1)複数科目への分散戦略を取らない場合

モデルの前提は次の通りとします

〈一次試験の受験中〉
 ・毎年、未取得になっている全科目を受験する。
 ・各科目の合格率はp1_low,p1_highの間の一様乱数で設定される。
 ・毎年一科目だけは合格率をstudyだけ高めることができる。

〈二次試験の受験中〉
 ・毎年、未取得になっている全科目を受験する。
 ・各科目の合格率はp2_low,p2_highの間の一様乱数で設定される。
 ・毎年一科目だけは合格率をstudyだけ高めることができる。

①毎年1科目を集中して勉強した場合

まず、毎年1科目を集中して勉強して、50%合格率を高めるケースを考えてみます。
p1_low=10%,p1_high=30%,
p2_low=10%,p2_high=20%,
study=50%として、1万回シミュレーションした結果は次の通りです。

> summary(test_50)
V1 V2
Min. : 1.000 Min. : 2.00
1st Qu.: 4.000 1st Qu.: 7.00
Median : 5.000 Median :10.00
Mean : 5.776 Mean :10.26
3rd Qu.: 7.000 3rd Qu.:12.00
Max. :24.000 Max. :40.00

V1は準会員になる年数、V2は正会員になる年数を表しています。平均すると正会員になるまでには10.26年かかる計算になります。
正会員になる年数の分布をヒストグラム化すると次の通りになります。
f:id:r_std:20180212220842p:plain

②人並みの努力しかしなかった場合

次に、毎年人並みにしか勉強しないケースを考えてみます。
p1_low=10%,p1_high=30%,
p2_low=10%,p2_high=20%,
study=0%として、1万回シミュレーションした結果は次の通りです。

> summary(test_0)
V1 V2
Min. : 1.000 Min. : 3.00
1st Qu.: 6.000 1st Qu.:11.00
Median : 8.000 Median :15.00
Mean : 8.771 Mean :15.35
3rd Qu.:11.000 3rd Qu.:19.00
Max. :32.000 Max. :65.00

f:id:r_std:20180212220822p:plain

正会員になる年数は期待値ベースで15.35年となり、1科目人並み以上に勉強したケースと比較すると5年程度の差がつくことが分かります。人並みの努力しかしない場合にはかなりの時間がかかるようです。

(2)複数科目への分散戦略をとった場合

次にモデルをさらに複雑にしてみます。一科目だけ集中して合格率を上げるのではなく、二科目に分散して合格率を引き上げる戦略を取った場合、正会員になるまでの必要年数はどうなるでしょうか。モデルの変更点は下記の赤字の通りです。

〈一次試験の受験中〉
 ・毎年、未取得になっている全科目を受験する。
 ・各科目の合格率はp1_low,p1_highの間の一様乱数で設定される。
 ・毎年2科目については合格率をそれぞれstudy1,study2だけ高めることができる。(残り1科目の場合は合格率をstudy1+study2だけ高めることができる。)

〈二次試験の受験中〉
 ・毎年、未取得になっている全科目を受験する。
 ・各科目の合格率はp2_low,p2_highの間の一様乱数で設定される。
 ・毎年2科目については合格率をそれぞれstudy1,study2だけ高めることができる。(残り1科目の場合は合格率をstudy1+study2だけ高めることができる。)

毎年2科目を集中して勉強して、合格率をそれぞれ25%ずつ引き上げた場合を考えてみます。
p1_low=10%,p1_high=30%,
p2_low=10%,p2_high=20%,
study1=25%,study2=25%として、1万回シミュレーションした結果は次の通りです。

> summary(test_50)
V1 V2
Min. : 1.000 Min. : 2.00
1st Qu.: 3.000 1st Qu.: 6.00
Median : 4.000 Median : 7.00
Mean : 4.691 Mean : 7.38
3rd Qu.: 6.000 3rd Qu.: 9.00
Max. :14.000 Max. :19.00

f:id:r_std:20180212223944p:plain

正会員になるまでの平均年数は7.38年となりました。1科目集中の戦略をとるよりも、複数科目を勉強する戦略の方が期待値ベースで必要年数が減らせることが分かります。また、合格に必要な年数のばらつきも複数科目を勉強する戦略の方が少ないことが示唆されます。

まとめ

アクチュアリー試験攻略においては、できるだけ複数科目に集中的に勉強に取り組むことが肝要であるようです。

2019/1/11追記:続編となる記事を作成しました。本記事と同様のシミュレーションをjavascriptを用いて実装してみました。
r-std.hatenablog.com


今回使用したソースコードは以下の通りです。

gist96cb267dc3df03f1144783cf38b6baa3

gista6770c9662958d15a5d652e3e708cd43